振動・騒音(NVH)解析

振動・騒音(NVH)解析

振動・騒音解析は、車両の快適性を高めるために必要不可欠な技術の一つです。Noise、Vibration、Harshnessの頭文字をとってNVH解析とも呼ばれます。自動車のほか、航空宇宙、船舶、家電、建築業界などにおいても製品の競争力を高めるために幅広く用いられています。

振動・騒音解析の適用例

車両の走行時に発生する振動・騒音対策
車両が道路を走行する際には、路面、エンジン、風切音などが原因で様々な振動・騒音が発生します。例えば、サスペンションへの減衰の付与、エンジンマウントの配置やフロアパネルの形状を工夫することで対策できます。

家電製品の動作時に発生する振動・騒音対策
家電製品の動作中には、主にモーターを起振源として振動・騒音が発生します。消音機を付与したり、筐体の形状を工夫したりすることで対策できます。

主な解析の種類

固有値解析

固有値解析は、ノーマルモード解析、または実固有値解析とも呼ばれ、構造物が示す共振周波数とそれに伴う振動形状(「どのぐらいの周波数で」「どんな形で振動するか」)を計算するテクニックです。この共振周波数で繰り返し荷重を受けた際、構造物が共振状態となり期待した性能を発揮できなくなる場合や、時にはそのまま破壊に至る場合もあるため、これらの周波数を事前に知ることが重要です。また、共振状態を引き起こす点に荷重が作用されないことを確認するためにその振動の形状を知ることも重要です。

固有値解析では以下の固有値問題を解くことで、固有値ω2(ωは固有振動数)と固有ベクトル{ϕ}を求めます。なお、Kは対象の剛性マトリクス、Mは質量マトリクスで、減衰マトリクスCは無視されます。

なお、固有値解析では振動・騒音の応答の絶対量は計算できないため、それらを計算する場合は以下に示す周波数応答解析や過渡応答が必要になります。

周波数応答解析

周波数応答解析を使用すると、定常状態の振動荷重に対する構造の応答を計算できます。一般的な用途は、自動車、回転機械、トランスミッション、パワートレインシステムから発生する騒音振動の解析です。なお、得られる結果は周波数応答関数(Frequency Response Function : FRF)と呼ばれ、加速度、速度、変位、音圧などが評価に用いられます。

周波数応答解析では以下の基礎式を解き、振動数ωの加振力{f}に対する、応答{u}を求めます。

過渡応答解析

過渡応答解析を使用すると、時間依存の荷重に関する構造の時刻暦応答を計算できます。典型的な応用例としては、地震、風、爆発を受ける構造物、または窪みを通過する車両が挙げられます。

過渡応答解析では以下の基礎式を解き、過渡的な加振力{f(t)}に対する、時間依存の応答{u(t)}を求めます。

複素固有値解析

実固有値解析と異なり、複素固有値解析では構造の複素モードが計算されます。複素固有値解析は通常、特別な物理挙動のために引き起こされる構造の不安定性を評価するために用いられます。例えば、摩擦に起因するブレーキシステムの「鳴き」の評価や、回転するコンポーネントを持つ構造物の固有値および危険速度の予測などにも活用できます。

流体騒音解析

自動車のドアミラーや新幹線のパンタグラフなど、流体の圧力変動の伝播により発生する騒音を流体騒音と呼びます。なお、流体騒音解析には、流れ場と音響場を別々に計算する分離解法と、Navier-stokes方程式により流れ場と音響場を同時に計算する直接解法の二つがあります。 >> 音響解析について



振動・騒音(NVH)解析に関する事例、動画、資料など

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NVHの解析プロセス

振動・騒音(NVH)解析のモデリング

1. モデリング

Altair HyperMesh、またはAltair SimLabを用いてNVH解析に必要なFEモデルを作成します。HyperMeshやSimLabでは、正確な中立面抽出や自動外部音場メッシュ生成などのユニークな機能によって、効率良くFEモデルを作成することができます。

HyperMesh ・汎用モデリング
・閉空間音場メッシュ
・フルビークルアセンブリ

Altair SimLab ・ソリッドモデリングに特化
・外部音場メッシュ<
振動・騒音(NVH)解析と最適化

2. 解析 / 最適化

Altair OptiStructやAltair AcuSolveを用いて振動・騒音のシミュレーションを実施します。時にはOptiStructやAltair HyperStudyの持つ強力な最適化機能を活用し、より良い設計案を高効率に探索します。

Altair OptiStruct ・構造振動・放射音
・構造最適化

Altair AcuSolve ・流体騒音
振動・騒音(NVH)解析の結果処理 / 結果分析

3. 結果処理 / 結果分析

Altair HyperViewを用いた固有モードおよび音圧分布の可視化や、Altair HyperGraphによる注目点の加速度応答の表示などを実施し、結果の分析を行います。振動騒音の原因をより詳細に分析するために、モード/パネル寄与分析や伝達経路分析(TPA)を実施する場合もあります。結果に対しより高度な信号処理を実施する場合はAltair Composeを用います。

Altair HyperGraph Altair HyperView ・結果確認
・寄与分析
・自動レポート

Altair Compose ・Matlab互換プログラミング
・信号処理
・結果演算

マルチフィジックス、連成シミュレーション






NVH解析に使われる主な製品

NVH性能の最適化

NVH性能の最適化

OptiStructは最新式の汎用FEソルバーです。高度なNVH解析において世界トップクラスの性能を誇り、非常に大規模な問題を、これ以上ないスピードで解くことができます。OptiStructには、NVH解析と最適化のための独自の高度な機能として、Auto-TPA解析、大規模なモデルに対応した固有値ソルバー(AMSES)、各種モデル縮退機能、設計感度解析、構造物のNVH性能の最適化を容易にするERP応答機能などが搭載されています。

Altair OptiStruct
自動NVH解析(アセンブリ&診断)

自動NVH解析(アセンブリ&診断)

NVH Directorは、車両NVHのモデリングと解析のニーズを満たすカスタマイズ環境です。数々の統合されたコンポーネントを使用することにより、真のフルビークル解析プロセスを効率良く実行することができます。NVH Directorには、NVH問題の物理的な根本原因を理解したり、素早い“what-if(仮定)”スタディによって高感度のパラメーターを特定したりするための、強力なポストプロセッシングユーティリティも用意されています。

NVH Director
きしみ音とがたつき音

異音と低級音

Squeak and Rattle Directorは、アセンブリのきしみ音(Squeak)とがたつき音(Rattle)の根本原因を排除するため、設計の代替案を素早く特定し、解析する新しいタイプの包括的ソフトウェアオートメーションです。

Squeak and Rattle Director