ブリヂストンサイクル

ブリヂストンサイクルのバイク開発と空力評価

トップ画像:「ANCHOR RP9」 画像提供:ブリヂストンサイクル

ブリヂストンサイクル株式会社のスポーツサイクルブランド『ANCHOR(アンカー)』のトラックバイクは、チームブリヂストンサイクリング所属選手および国内トップ選手に供給され世界選手権優勝、ロードバイクでは国内のトップカテゴリーで連勝するなど、素晴らしい結果を出しているトップブランドです。これらのレースで使われた自転車は、シンプルな構造の中に、空力、重量、剛性、安全性、機能性、デザイン性など、さまざまな特性が高い水準で搭載されてます。

ブリヂストンサイクルでは2015年頃からスポーツ用自転車に関する基盤技術を再構築しようという取り組みが始まり、2017年にはトラックバイク開発と合わせてCAEでの空力解析がスタートしました。

熱流体解析ソフトウェアAltair AcuSolveの導入について、ブリヂストンサイクル開発担当の長谷川彰洋氏は「AcuSolveは既にブリヂストンで導入、使用実績がありましたので当社でもスムーズに導入出来ました」と述べています。ブリヂストン研究部門担当の内田和男氏は、「AcuSolveの導入を決めた理由は、一般的に煩雑になりやすいCFD(計算流体力学)のモデリングが非常に簡便にでき、有限要素法のため精度が保証され、計算時間も比較的短いというソフトウェアとして優れている点が挙げられます。他のFEMソルバーとも連携しやすく、今後の解析業務の拡がりが期待できること、また、アルテアの担当エンジニアが優秀でいろいろ相談できることも大きな理由です」と語ります。

「当社では、トラックバイク開発において、主にハンドルの調整にAcuSolveを活用しています。2021年9月発売の新型ロードバイクANCHOR RP9においてはトラックバイク開発での経験を活かし、空力への寄与が大きいエリアを重点的に解析し、改良を繰り返しました。具体的にはフレームのヘッドチューブ(先頭付近)やフロントフォーク、ステムなどです。AcuSolveでは自転車全体での解析も比較的短時間で行うことができるため、何度も解析を行い、空力の目標値達成へ繋げることができました」(長谷川氏)とAcuSolveを評価しています。

「トラックバイクやロードバイクの開発は、空気抵抗低減だけを考えていればよいわけではありません。組み合わせる部品による制約を受けながら、剛性や重量の目標値を同時に達成する形状を検討する必要があります。弊社の開発チームは、空力、剛性、モデリングなど、専門領域ごとに担当が分かれていましたが、それぞれの内容について十分理解しながら開発を進め、達成すべき目標値、完成させる自転車の方向性についても共通認識を持っていたため、厳しい制約の中、スムーズかつ効率よく開発を進めることができました。」(長谷川氏)

完成したトラックバイクやロードバイクは、選手から「速い!」「タイムが良くなった」といった感想や報告が相次ぎ、好評を得ています。「カッコイイ!」という声も選手や観客のSNSで投稿されています。「高い空力性能を目指した結果、機能美というような形で感じ取って頂けているのではないかと思います。そういった評価が選手のモチベーションにも繋がっているとすれば嬉しい限りです」(長谷川氏)

ブリヂストンサイクル開発担当の中村隆志氏は「選手から感謝の言葉もいただき、苦労はしましたが、改めて開発してよかったと思っています。今後は、高度な構造解析や走行シミュレーションを活用していき、スポーツ自転車のみならず、軽快車や電動アシスト車の製品開発に取り組んで行きたいです」と抱負を語りました。

「ブリヂストンサイクル本社」
写真提供:ブリヂストンサイクル

「ANCHOR RP9使用 チームブリヂストンサイクリング所属今村選手(写真中央)」
PHOTO: Satoru Kato

「Altair AcuSolve解析結果」
写真提供:ブリヂストンサイクル

About ブリヂストンサイクル

日本の自転車メーカー「ブリヂストンサイクル株式会社」は、電動アシスト自転車をはじめ、ロードバイクや通勤・通学用自転車、幼児用の自転車など、幅広い製品ラインナップを揃え、商品企画から、製品開発、生産、販売までを一貫して担っています。自転車安全教室や講演会を通じて自転車の理解と普及を図るなど、1949年創設以来、自転車文化の発展に取り組んでいます。