自動車軽量化イノベーションを称える第5回Altair Enlighten Awardを、FCA社、Toyota社、Faurecia社、AP&T社が受賞
完成車部門とモジュール部門の2位は、それぞれHonda社とConstellium社に
ミシガン州トロイ、2017年7月31日 – Altairと米国自動車研究センター(CAR=Center for Automotive Research)は、自動車軽量化イノベーションの推進と表彰を目的とした第5回
Altair Enlighten Awardの受賞企業を発表しました。完成車部門賞は、前モデルから113kgもの軽量化を達成した2017 Chrysler Pacificaが受賞しました。モジュール部門賞は、2017 Prius PrimeおよびLexus LC500に搭載されたToyota社のCFRP製密閉パネルと、2017 Chevrolet Silveradoの排気システムに搭載されたFaurecia社のアダプティブバルブが受賞しました。軽量化実現技術部門賞は、金属成形を専門とするスウェーデンのAP&T社が開発した高強度アルミニウム成形技術が受賞しました。この技術は、ヨーロッパの複数の高級スポーツカーに使用されています。各賞とも、本日、ミシガン州トラバース市で開催された
2017年度CAR Management Briefing Seminars(MBS)にて授与されました。
審査委員長でCARの社長兼CEO、およびCARのCoalition for Automotive Lightweighting Materials(自動車軽量化素材連合)の取締役でもあるJay Baron博士は、「本賞は今年で5年目を迎え、ますます国際色豊かなエントリーが集まりました。現代の自動車メーカーが抱える軽量化という世界共通の課題に対して、様々なイノベーションが提示され、その多様さには目を見張るばかりです。FCA社、Toyota社、Faurecia社、AP&T社をはじめ、2017年のすべての最終候補企業が、軽量化、燃費向上、CO2排出量削減に貢献しています。Enlighten Awardは、こうした功績にスポットライトを当て、表彰する素晴らしい方法です」と述べています。
FCA社のチームは、2017 Chrysler Pacificaの設計を一から見直すことで、軽量化と同時に、安全性、NVH性能、車内空間、快適性の向上を達成しました。76kgの軽量化に成功したボディは、高張力鋼に加え、TP鋼とホットスタンプ品を大量に使用することで、軽量化しながら衝突安全性も向上しました。リアスライドドア、リフトゲート、インストルメントパネルビームにはアルミニウムと鋳造マグネシウムを使用した一方で、フロントエンドモジュールには鋼・プラスチックオーバーモールド品を使用し、部品数削減と剛性向上を実現しました。トポロジー最適化スタディなどのシミュレーション手法を、車両開発工程を通して利用することで、材料効率の良い設計が完成しました。
FCA North America社のHead of Product Developmentを務めるPhil Jansen氏は、「2017 Chrysler Pacificaは、急速に変化する事業環境に対する、我々のエンジニアの答えです。顧客からは、効率化を求める声がますます高まっています。もちろん、機能性を犠牲にすることはできません。質量削減によって実現したPacificaの広々としたパッケージにより、そうした期待を上回ることができます」と述べています。
車両のシステム、サブシステム、コンポーネントに限定したモジュール部門については、各国の専門家が集まる審査委員会で受賞企業を1社に絞り込むには至らず、Toyota社とFaurecia社の同時受賞が決定しました。Toyota社の受賞エントリーは、2017 Lexus LCのサイドドアおよびラゲッジドアと、2017 Toyota Prius Primeのリフトゲートに関するものです。どちらも、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製インナーパネルと、アルミニウム・ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)・ポリプロピレン製アウターパネルを組み合わせることで、従来の金属構造部品から47%の軽量化を実現しました。
Toyota Motor North America R&D部門のExecutive Program Managerを務めるJP Flaharty氏は、「当社は、各車両の独自要件に最適化された、画期的な密閉パネルを開発しました。Prius Primeのリフトゲートと、Lexus LCのサイドドアおよびラゲッジドアにCFRPを使用することで、軽やかな使用感を実現しました。加えて、この洗練された軽量なドアシステムにより、ハイテクな外観を演出しています。Altair Enlighten Awardのモジュール部門賞を受賞でき、開発チーム一同は、光栄に思います」と述べています。
Faurecia社の受賞エントリーは、排気システムの中間パイプに取り付けるアダプティブバルブ(オフセットシャフトのスプリングリターン バタフライバルブ)です。気筒休止システムのNVH問題の対処に特化したバルブで、排気ガスの流れを可変制御することで騒音を低減します。アダプティブバルブは従来品よりも省スペースな上に、その革新的な設計により、2017 Chevrolet Silveradoのマフラー重量を12kg削減することに成功しました。
President of Faurecia Clean Mobility North Americaを務めるDave DeGraaf氏は、「FCMアダプティブバルブによってAltair Enlighten Awardを受賞でき、光栄に思います。プロジェクト成功のために懸命に取り組んだアダプティブバルブ開発チームは、当社の大きな誇りです。本賞の受賞は、彼らの独創性と献身的な姿勢が評価された証と言えるでしょう」と述べています。
最後に、本年度から新設された軽量化実現技術部門賞は、AP&T社に決定しました。同社のアルミニウム成形技術は、高強度アルミニウムプレス成形用の世界初の多目的生産ライン技術です。この生産ラインでは、複雑な形状の高強度ボディコンポーネントを柔軟に成形でき、30~50%の軽量化につながります。
AP&T社のTechnology Development部門CTOを務めるChristian Koroschetz氏は、「2017年度Enlighten Awardを受賞することができ、身に余る光栄です。本賞の受賞は、製品の軽量化と安全性、さらには燃費向上による気候・環境への影響低減に一貫して取り組んできた当社にとって、大きな成果です。当社が開発した多目的生産ラインは、高強度アルミニウムコンポーネント(AA6xxxおよびAA7xxx)の成形における抜群の柔軟性と優れた設計自由度を提供し、新しい方法での機能や部品の一体化を可能にします」と述べています。
本年度の完成車部門の第2位は、複数材料のスペースフレームにより2017 Acura NSXを22kg軽量化したHonda社に贈られました。また、軽量化実現技術部門賞の第2位は、HSA6TMアルミニウム合金を開発したConstellium社が受賞しました。従来の6000系アルミニウム合金をこのアルミニウム合金で置き換えた車両は、最終的に15~30%の軽量化に成功しました。
AltairのAutomotive and Global Markets TeamのSenior Vice-Presidentを務めるRichard Yenは、「私個人としても、本年度Altair Enlighten Awardにご参加いただいたすべての企業に感謝したいと思います。本賞を通じて知識や経験を共有することにより、自動車業界一丸となって軽量化とCO2排出量という問題に対応することができます。これらの問題に取り組む上で、シミュレーションソフトウェアが中心的な役割を果たしていることは明白です。その証拠に、完成車部門およびモジュール部門のほぼすべてのエントリーで、材料効率に優れた革新的な製品を開発するにあたり、設計最適化テクノロジーが使用されていました」と述べています。
Altair Enlighten Awardは、その年の車両軽量化における最高の業績を称え、政治家、教育者、学生、および社会からの関心を集めることで、業界での新たなアイデアをさらに競い合う機会を創出し、技術的な進歩を共有するためのものです。本賞は、世界各地の自動車産業、学術界、エンジニアリングメディアから招聘した自動車専門家で構成される審査委員会で決定されます。本年度も、この審査委員会で最終候補企業29社の功績について議論が行われました。
Altairについて
1985年に設立されたAltairは、ビジネスパフォーマンスの改善のために、設計、プロセス、意思決定を統合かつ最適化するシミュレーション技術の開発と様々な分野への適応に注力しています。 2,600人を超える従業員を擁する非上場企業であるAltairは、米国ミシガン州トロイに本拠を置き、23ヵ国に67以上のオフィスを構えています。 顧客は多種多様な業種にわたり、その数は5000社以上にも及んでいます。 詳細については、
www.altairjp.co.jpをご覧ください。
CARについて
CAR(自動車研究センター=Center for Automotive Research)は、ミシガン州アナーバー市に拠点を置く非営利団体です。同センターでは、世界の自動車業界が向かう未来にまつわる重要なテーマに関連した研究を行うとともに、自動車関連業界にとって有益、かつ業界の連携を促進するフォーラムの企画運営を手がけています。詳細は、CARのウェブサイト
www.cargroup.orgをご覧ください。