クラシックカーと先進テクノロジーの融合:
VW CADDYに3Dプリンター製フロントエンド構造を搭載
個別化、機能統合、イノベーション: 工業用3Dプリンターの潜在的価値を示した3i-PRINTパートナーシッププロジェクト
ドイツ クライリング、2017年8月29日 – Altair、APWORKS社、csi entwicklungstechnik社、EOS社、GERG社、Heraeus社は、クラシックカーVW Caddyのフロントエンド構造最適化プロジェクトにおいて、自動車産業における工業用3Dプリンターの可能性を余すところなく示しました。開発されたフロントエンド構造は、非常に軽量で安定性に優れているだけでなく、多数の機能が統合されています。3i-PRINTと名付けられた今回の共同開発プロジェクトでは、参加企業により、フロントエンド構造の設計からシミュレーション、最適化、製造、ポストプロダクションに至るまでの全開発プロセスをカバーしました。コンセプトデザインから車両の完成までにかかった期間は、わずか9か月でした。
自動車産業における積層造形のメリット
工業用
3Dプリンティング(別名、積層造形(AM))は、今後数年の間にイノベーションを加速させ、重要な開発プロセスに影響を与えることが予想されており、大量生産の現場に欠かせない技術になることが見込まれます。実際、すでに様々な産業で導入が進んでいます。積層造形を利用した製造・設計技術は刻々と進化し続けており、今後、積層造形のさらなるコスト低減および効率性向上が期待されていることから、工業用3Dプリント技術の使用が増加の一途をたどることは確実です。それは自動車産業においても例外ではありません。イノベーションの加速と開発プロセスの徹底的な強化のためには、今日の設計および積層造形技術のあらゆる可能性を検討する必要があります。
自動車エンジニアリングにおける積層造形の真の価値を引き出すには、構造力学や軽量化の範疇を超えた発想が欠かせません。可能な限り少ない部品数で可能な限り多くの機能を実現し、かつ付加価値をつけるという機能統合もまた、自動車産業にとっての3Dプリントの魅力の1つです。VW Caddyのコンセプトデザインでは、未来のテクノロジーの可能性を明らかにすることを目指しました。
有機的な設計で耐荷重構造を実現
パワートレインやアクチュエーターなどのコンポーネントの電動化が進行していること考慮し、フロントエンド構造の設計では、熱管理、設計空間縮小、全体重量削減の3点を重要なポイントと考えました。その上で、車両安全性、車両性能、乗り心地に関連した構造要件を満たす必要がありました。
これらを勘案した結果、積層造形フロントエンド構造は、アクティブ / パッシブクーリング性能(バッテリーやブレーキシステム冷却のための吸気経路)を備えた耐荷重構造となりました。さらに、熱管理、パッシブセーフティ、液体貯蔵に関連した機能を、耐荷重を重視した有機的な設計のフロントエンドモジュールに統合しました。フロントエンド構造への機能統合の例としては、ウォッシャー液タンクが挙げられます。このタンクは、トポロジー最適化によってフロントエンド構造に統合することができました。
プロセスチェーンの専門知識の融合
こうした目標を念頭に、csi entwicklungstechnik社の専門家がフロントエンド構造の設計・開発・製造に取り掛かりました。同社は、自動車のボディやインテリア / エクステリアの高品質モジュールを開発し、完成車メーカーおよび自動車部品サプライヤーに提供している企業です。一方、自動車産業や航空宇宙産業においてプロトタイピングおよび小スケールモデル作製の革新的なソリューションを提供している大手サプライヤーであるGERG社は、積層造形部品の接合と最終フレームの作製を担当しました。設計や製造プロセスの統合と最適化のためのシミュレーションテクノロジーの開発および多分野への応用を専門とするAltairのソフトウェアソリューションは、フロントエンド構造の設計、
最適化、
シミュレーション、開発で活用されました。
コンセプトデザインのシミュレーションと設計の完了後、APWORKS社が3Dプリンター用にコンポーネントの最終寸法を決定しました。APWORKS社は、3Dプリンティングの前処理の専門知識を提供し、フロントエンド構造の実際の積層造形も担当しました。Airbus社の子会社である同社は、最先端の製造プロセスに精通し、様々な産業において航空宇宙産業のベストプラクティスを実施しています。フロントエンド構造のプリント時にAPWORKS社が使用したのは、金属 / ポリマーの工業用3Dプリンティング分野の大手テクノロジーサプライヤーであるEOS社が開発したシステムです。フロントエンド構造の製造にはAPWORKS社が開発した高強度アルミニウム合金Scalmalloy
®が使用され、金属粉末を専門とするHeraeus社がScalmalloy
®の供給および品質評価を行いました。プリント工程では、APWORKS社はEOS M 400システムの理想的なプリントパラメータセットを考案しました。Scalmalloy
®という革新的な材料を用いて積層造形を行ったことにより、従来の製造技術では実現し得ない機能統合の可能性を明らかにすることができました。
3i-PRINTプロジェクト: 革新的なプロトタイプコンセプトを開発
csi entwicklungstechnik社の発起よって始まった3i-PRINTプロジェクトは、革新的なプロトタイプコンセプトの研究開発のためのアジャイルエンジニアリングプラットフォームとして機能しています。工業用3Dプリンティングを含む、新しい開発ツールや開発手法の活用することにより、最先端の製造手法の潜在的価値を明らかにし、余すところなく活用することを目標に掲げています。3i-PRINTプロジェクトは、新しいアイデアの早期実用化を目指すコラボレーションのためのオープンなプラットフォームです。
csi社のホワイトボディ部門で軽量化設計を担当しているStefan Herrmann氏は、「模範的な新しい積層造形フロントエンド構造を搭載したVW Caddyを紹介することができ、誇りに思います。この新構造や、旧設計と新設計の違いを見れば、3Dプリントと機能統合の潜在的価値は一目瞭然です。とりわけ、自動車産業には大きなメリットをもたらすでしょう」。さらに、「迅速に開発を進めることで、立案から車両完成までの工程をわずか9か月という短期間で完了できたことを強調しておきたいと思います。各参加企業はそれぞれの分野のリーダーです。画期的なコラボレーションと専門知識の融合により、3i-PRINTプロジェクトは目覚ましい成功を収めることができました」と、述べています。
Caddyは、
Converge 2017(ドイツ エッセン)や
formnext 2017(ドイツ フランクフルト)などのイベントでご覧いただけます。
詳細については、
www.3i-print.comをご覧ください。
Altairについて
1985年に設立されたAltairは、ビジネスパフォーマンスの改善のために、設計、プロセス、意思決定を統合かつ最適化するシミュレーション技術の開発と様々な分野への適応に注力しています。 2,600人を超える従業員を擁する非上場企業であるAltairは、米国ミシガン州トロイに本拠を置き、23ヵ国に67以上のオフィスを構えています。 顧客は多種多様な業種にわたり、その数は5000社以上にも及んでいます。 詳細については、
www.altairjp.co.jpをご覧ください。
AIRBUS APWORKS社について
Airbus社の完全子会社であるAIRBUS APWORKS社は、実績に裏打ちされた航空宇宙テクノロジーを多くの産業に提供しています。金属3Dプリンティング(積層造形)に注力している同社は、コンポーネント設計の最適化から、適切な材料の選択、プロトタイピング、検証済みの連続生産に至るまでの、すべてのバリューチェーンをカバーしています。ロボティクス、機械エンジニアリング、自動車、医療機器、航空宇宙といった産業の顧客に、軽量化とリードタイム短縮に加え、機能統合と最適化を実現した部品を提供しています。また、3Dプリンティングでは、これまで以上に複雑な形状を生産することも可能です。AIRBUS APWORKS社は、2013年よりミュンヘン南部のルドウィグ ベルコウ キャンパスを拠点としています。
http://www.apworks.de/en/
csi entwicklungstechnik社について
csi entwicklungstechnik社は、自動車産業の開発パートナーです。約600人の従業員を擁し、ドイツ ネッカーズルムに本社を構えています。その他に、インゴルシュタット、ジンデルフィンゲン、ミュンヘン、ヴォルフスブルク、ツヴィッカウ、ヴァイザッハ、ヴィンターベルク(ALU-CAR社)に事業所があります。大手自動車メーカーや多くのシステムサプライヤーが、サーフェス、ホワイトボディ、エクステリア、インテリア、エレクトロニクスの完成モジュールの開発時にcsi社のノウハウを活用しています。自動車産業の製品開発プロセスに特化しており、コンサルティングサービス、csiアカデミーでの入門・継続研修、プロジェクト管理サービスも提供しています。すべての開発工程において一貫して透明性を確保することが目的です。
www.csi-online.de
EOS社について
EOS社は、金属 / ポリマーの工業用3Dプリンティングの世界的大手テクノロジーサプライヤーです。1989年に創業した独立系企業である同社は、積層造形の包括的なソリューションのパイオニアであり、数々の革新的なソリューションを開発してきました。EOSシステム、材料、プロセスパラメータという製品ポートフォリオは、決定的に優れた製品品質と製造プロセスの長期的な経済安定性をもたらしています。
www.eos.info
Modell- und Formenbau Blasius Gerg社について
Gerg社は、自動車産業やモータースポーツ産業向けのコンポーネントやアセンブリのプロトタイプおよび小スケールモデルの製造、航空宇宙産業や医療機器産業向けの精密部品の製造を行っています。非常に広範な製造能力を駆使して、複雑なハイエンド製品を単独で供給し、プロセスエンジニアリング、切削加工、CFK軽量構造、レーザー溶融、光学テクノロジー、コーティング、レーザー溶接、組み立て、最終検査などのサービスも提供しています。
Gerg社は、アイデアを形にしています。
www.gerg.de/en/
Heraeus社について
1851年創業。ドイツ ハーナウに本社を置くテクノロジーグループであるHeraeus社は、同族経営の世界的大手企業です。専門知識、イノベーションへの注力、オペレーショナルエクセレンス、事業創造のリーダーシップを武器に、世界各地の顧客の事業改善に継続的に取り組んでいます。高品質なソリューションを開発するとともに、材料に関する専門知識とテクノロジーのノウハウを組み合わせることにより顧客の長期的な競争力強化を実現しています。
www.heraeus.com