ヒュンダイモービス

ヒュンダイモービスのシールド効果検証



ヒュンダイモービスについて

現代自動車グループのHyundai MOBISは、自動車の中核部品を生産しています。Hyundai MOBISの製品は、シャシー、コックピット、フロントエンドモジュールなどのモジュールと、顧客の利便性と安全性を高める多くの自動車部品です。Hyundai MOBISは主に現代自動車と起亜自動車にモジュールを提供しており、その他にも世界の自動車メーカーに向けて事業を拡大しています。



課題

電磁両立性(EMC)の要求を満たすため、外界からの電磁波や電子製品からの電磁波の漏れを防ぐのが遮蔽体です。しかし、これらの筐体は、視認性や通気性、内部部品へのアクセスを考慮した開口部やスロットによって、しばしばその健全性が損なわれます。例えば開口部があると、外部の電界や磁界が内部空間に侵入し、プリント基板(PCB)に結合する可能性があり、その結果、内部の導体に電流や電圧が発生してしまいます。このような開口部がある場合のシールド筐体の効果を短期間かつ効率的に検証しなくてはなりません。



ソリューション

Hyundai MOBISでは、現在設計中のアラウンドビューモニター(AVM)筐体について、PCBレベルからシステムレベルまで、シールド効果を含めた問題を分析しました。

PCBレベルでは、シグナルインテグリティとパワーインテグリティに関するシミュレーションを行い、共振、インピーダンス、特性インピーダンス、同時スイッチングノイズ、DC IRドロップなどの電力問題を特定しました。コンデンサの値を変更したり、ループインダクタンスを低減するためにグランドプレーンの構造を変更するなどして問題を解決し、規格や規制を満たしました。シグナルインテグリティに関しては、DDR2とUSBの通信において、より高い周波数でのアイビュー解析を行い、オーバーシュートやアンダーシュートなどの問題を特定し、直列抵抗またはドライバーの終端の値を微調整して解決しました。

システムレベルでは、基板から発生する電磁干渉のレベルを下げるため、Altair Feko®を用いてAVMの筐体の材質がシールド効果に与える影響を解析しました。まず、PCB周辺の近傍界をケイデンス社のSigrity解析ツールで計算し、.nfdファイル形式にエクスポートします。次に、.nfd形式の近傍界をFekoに取り込み、これらのフィールドからPCBの等価ソースを作成します。この方法はモデル分解と呼ばれています。AVMの筐体に関連するCADファイルもFekoにインポートし、AVMに使用される筐体の3D解析とシールドファクターのシミュレーションを行いました。

“Fekoは私に非常に高い信頼性を与えてくれ、3Dの電磁両立性(EMC)の問題をより早く解決できます。”

Imran Shaik,
Manager, EMI/EMC Division, Hyundai MOBIS



結果

0.4GHzから4GHzまでの複数の周波数における等価電源とAVM筐体からなるアセンブリの表面電流をFekoでシミュレーションを行った結果、筐体のスロットと中央の取り付け穴の周辺で、電流密度が高くなっていることが分かりました。そこで、スロットやコネクターの幅を調整し、このようなホットスポットを減らし、さらにはなくすことに成功しました。

筐体の材料についても、Fekoで各種複合材料がシールド効果に及ぼす影響を分析し、周波数に対して望ましいシールド係数を示す材料を選択できました。さらにHyundai MOBISでは、燃費、性能、製品の魅力、信頼性、持続可能性などの要求を満たす、新しい超軽量材料を開発しています。



まとめ

Hyundai MOBISでは、Fekoによるモデル分解と3次元解析をベースにしたシステムレベルのアプローチにより、精度を維持したままシミュレーション時間を33%短縮することができました。また、Fekoの結果から、遮蔽効果の高い最適な複合材料を選択できました。

3D結果:AVMユニットの筐体に使用可能な様々な素材について、シミュレーションによるシールド効果の比較(dB表記 横軸は周波数(GHz))

アラウンドビューモニター(AVM)は、車両の上方からの仮想的な俯瞰映像により、車両周辺の状況を把握し、駐車を容易にするための支援技術です。

3D解析: 内部のPCB等価ソースを用いたAVMユニットの表面電流のFekoシミュレーション結果

3D解析: 内部のPCB等価ソースを用いたAVMユニットの表面電流のFekoシミュレーション結果